1.おはよう
2004/09/26


「27.寝顔」の対になっているお話です。



安らかなまどろみに身を委ねていた私は、微かな物音が聞こえたような気がして現実に引き戻された。
本来ならば昨日までに決済しなければならない山積みの書類を先刻やっとのことで終わらせ(今日以降分の書類まではとても回らず、それらの山はいまだに存在しているのだが)ホークアイ中尉が中座した間に疲れた目を少しでも休ませようと目を閉じた。どうやらそのうちに眠ってしまったらしい。さっきやっつけた書類がそっくりなくなっているところをみると、中尉が持って行ったのであろう。今まで自分を起こさないところをみると、少し休ませてくれるとお許しが出たようだ。まったく、本当にできた副官だよ、君は。


コツ・・・。
私はピクリとした。ほんの僅かだが物音がした。
やはり気のせいではなかったな。伊達にこの若さで大佐まで昇っている訳ではない。今までいろいろな危機的状況を乗り越えてきたんだ。この程度で私を出し抜こうなどとは甘い。
目覚めたばかりで覚醒しきっていない意識を無理やり総動員させ、その物音に集中する。どうやら足音らしく、こちらに向かっているようだ。
普通に歩いている足音ならそれ以上気にもかけなかっただろう。だが、その足音は違っていた。意図的に音を殺し、徐々に近づいて来る。
何者だ?侵入者か?私を殺めにでもきたのだろうか?
今日は各人ともちょうど外出していて人が少ない。そこを狙ったのか?
寝起きの頭でいろいろ考えを巡らせてみた。
軍内部の人間だろうか?うーん、恨まれるおぼえは・・・在り過ぎてわからん。
己の野望のために何でもしてきた。姑息・卑怯といわれるような手段でも何でも。私への恨みなどそこら中に転がっているに違いない。過去を思い返しては苦笑いが浮かんだ。


また、微かに音がした。
-----!
ふとその足音の特徴に気がついた。もしや・・・。
微かだが気配を感じた。どうやら、その人物は部屋の前まで到達したらしい。入り口のドアの前でこちらの様子を窺ってでもいるのか?
少しすると、ノブがゆっくりと回され僅かにドアが開けられた。
該当する人物に心当たった私は咄嗟に目を閉じた。幸いにも眠っていたときとほとんど変わらない体勢をとったままだったので、それだけで外見からは頬杖をついて転寝をしているように見えるはずだ。私は眠った振りをして、相手の様子を窺うことにした。
随分と用心しているのか、まだ入ってくる様子はない。少しだけ開けた隙間から部屋の中を窺っているようだ。
全く、何をやっているんだこの子は。敵の根城に乗り込んでいるわけではないんだぞ。ったく、いつもはこちらの状況などお構いなしにずかずかと入ってくるくせに・・・・。何の目的があってこんなことをしているんだ?
ゆっくりと部屋へ忍び込もうとしているその侵入者----エドワード・エルリックは私の姿を見つけると驚いたようで僅かだが声をあげた。私が居るとわかっているからこそ、気配を消して潜入してきたのだろうに、なぜ私を見つけて驚いたりしたんだ?
何とも奇妙な彼の行動に些か首をかしげた。
ははぁ・・・。なるほど、そういうことか。
それならば、合点がいく。
先程必死で片付けた書類の中にどうしても今日中に処理を完了させなければならないものがあった。そのせいで、中尉からはいつも以上にお小言を頂戴したのだ。きっと彼女は緊急性のあるそれを自ら担当部門へ届けに行ったのだろう。今日はみんな出払っているし。・・・恐らく、その途中にでも鋼のとばったり出くわして・・・・全く、中尉も言わなくてもいいことまで彼に言ったんだろうな・・・・・。私が居眠りしているとか、なんとか・・・・。
彼は相変わらず足音を立てないようにして、部屋に入ってきた。続いて、ギュッと音がして、私は彼がソファーに腰を下ろしたのだろうと察しがついた。
どうやら彼は私が目を覚ますのを待つつもりらしい。クッと心の中で笑いが起こった。落ち着きのないこの子供がおとなしく待つなんてことできるわけないだろうに。
彼に気づかれないようにうっすら目を開いて見ると、ソファーに腰を下ろして組んだ足の上で頬杖えをついている彼の横顔が見えた。顔を窓のほうに向けて外を見ているようだ。その表情は、いたずらを思いついた子供のように楽しそうだ。
きっと私が寝ていることをからかって、何かやらかす気なんだろう。全く、なんだかんだ言ってもまだまだ子供だな。
寝顔(本当は起きているが)を晒しているのはなんとも恥ずかしいが、まあいい。さて、どっちが先に根を上げるか我慢比べといこうじゃないか。とはいっても、彼が焦れて先に根を上げるに決まっているがね。そのときは女性たちが見惚れるとっておきの笑顔で言ってやろう。
“おはよう”とね・・・・。





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「27.寝顔」の大佐サイドとして書きました。
うーん・・・意味わからん!って感じですね。
スイマセン。
大佐・・・あんたもじゅーぶんガキだよ。そんなんで意地張っちゃってさ。
でも男の人のそんな子供じみたところががわいくて結構スキだったりする・・・・。



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